今夜はスペイン盤の『マルメロの陽光』を部分的に視聴。本編の画質はS/N感こそ悪いですが、解像度や発色は明らかに国内盤よりも良いです。元になるマスター素材の差が露骨に出ている感じですね(とは言え、以前にラピュータ阿佐ヶ谷で観たプリントの素晴らしさには遠く及ばないのですが・・・)。大雑把に国内盤と比較してみた感想は、国内盤は映像の明度が高すぎて画面が全体的に白っぽく、スペイン盤はしっとり艶やかでフィルムライクな映像といった感じでしょうか。この国内盤に特有とも言える画面の傾向はいつ改善されるのでしょうかねぇ。で、ここから核心なんですが、特典ディスクの充実ぶりが凄いことになっています。まず涙ちょちょぎれものなのが、アントニオ・ロペスのスケッチ作業をエリセ本人がビデオ撮影した(いわゆる「メモ」と呼ばれる)映像素材集が収録されていることです。この映像については「E/Mブックス ビクトル・エリセ」のインタビュー記事で知っていましたが、まさかこの目で観ることができるなんて夢にも思っていなかったので感動もひとしおでした。単なる記録映像ではなく、ロペスのナレーションが入っていたり、過去のスチル写真や風景が挿入されていたり、長いディゾルブを使ったモンタージュがあったりと、きちんとした一つの作品として仕上がっているところが良かったですね。また、エリセ監督とアントニオ・ロペスが出演しているTVのトーク番組映像なんてのも収録されています。動いているエリセ監督はめちゃくちゃレアです(笑)。英語字幕が表示できるので、いずれ翻訳してやろうと意気込んでいます(なんて無謀な^^;)。さらに未公開シーン集。エンリケ・グランとロペスがベラスケスの「ラス・メニーナス」を巡って意見を交わすシーンが収録されています。『マルメロの陽光』には、この二人がミケランジェロの「最後の審判」を眺めながら意見し合うシーンが出てきますが、エリセのベラスケスに対する思い入れの深さ、「ラス・メニーナス」を題材にした映画の製作を断念したという経緯を思えば非常に興味深いシーンだと言えます。これにも英語字幕が表示されるので、是が非でも翻訳したいですね。この他にもエリセの初監督作品である『対決』のスチル写真が数点、ロペスと彼の友人たちのプライベート&美術作品の写真集(なんと240点!)などとにかく盛り沢山の内容でした。『マルメロの陽光』がこのような豪華な仕様でDVD化されたことは本当に驚きです。エリセ監督はDVDに強い関心を持っているようなので、もしかたら『ミツバチのささやき』や『エル・スール』のコレクターズ・エディション盤もリリースされるかもしれませんね。『ミツバチのささやき』公開25年後に作られたドキュメンタリー番組『精霊の足跡』や、エリセの初期短編3作、『エル・スール』の幻の後半部に関する資料等などいろいろと夢は膨らみます。スペイン盤『マルメロの陽光』のレビューは近々エリセ部屋にアップする予定です。国内盤との比較記事も合わせてアップしたいと思っています。