2004-03-01から1ヶ月間の記事一覧

 『アメリカの影』

監督:ジョン・カサヴェテスハリウッド・システムと相反する撮影方法で作られた革新的なアメリカ映画。俳優が明らかに演技をしているにも関わらず、あたかもそれが現実に起こった出来事のように生々しく映し出されているのが凄い。即興による演出と脚本だか…

 『黒い罠 完全版』

監督:オーソン・ウェルズ環境と状況によって変化していく、人間の善悪の相対性を描いたフィルム・ノワール。冒頭のクレーン撮影による鮮やかな長廻しで始まる本作はまさに映画技法の見本市。中でも接写による極端なあおりアングル(ほとんどの室内シーンで…

 『孤独な場所で』

監督:ニコラス・レイアンチ・ハリウッド精神に貫かれた異色ロマンス。殺人事件と男の暴力性、二つの不安要素が危ういながらも繋がっていた男女の関係を決定的な破滅へと導く。その過程が、適確なリズムと巧みな演出によってシャープに描かれていく。ボガー…

 『上海から来た女』

監督:オーソン・ウェルズ馬車に乗ったブロンド美女に導かれ、人間の暗黒面へと足を踏み入れてしまう善良な男を描いたフィルム・ノワール。編集段階で1時間もカットされたというだけあって話はどこかチグハグしているけれど、天才ウェルズの面目躍如たる映像…

 『座頭市(89年版)』

監督:勝新太郎たま〜に耳を刺激する音があるだけの酷く退屈な前衛音楽なのかと思いきや、最後の最後でとんでもなくパワフルな心震わす旋律をパッと響かせて終わっていく、そんな時代劇だった。良くも悪くも監督・勝新の個性が強烈に発揮されていて、物語構…

 新たに増えた銀盤

『座頭市(89年版)』(北米盤)

 『鬼婆』

監督:新藤兼人剥き出しの人間性、その荒々しい欲望の乱舞を、風吹き荒ぶススキが原を舞台にシャープなモノクロームで生々しく描き出した原始エロス。言葉ではなく表情や動きによって性欲の葛藤をダイナミックに捉える演出が素晴らしい。戦争下における社会…

 『狩人』

監督:テオ・アンゲロプロス内戦終結後も続いた不安定な政情がようやく沈静化に向いつつあった1976年の大晦日。冬の狩を楽しむブルジョワたちが、内戦で死んだパルチザンの遺骸を発見する。かつて反政府軍の司令部だったホテル"栄光館"を舞台に、支配者階級…

 新たに増えた銀盤

『鬼婆』(クライテリオン盤)

 『旅芸人の記録』

監督:テオ・アンゲロプロス欧米列強に蹂躙され、利用され、右左両派の内戦をも引き起こしたギリシャ現代史1939年〜1952年、その10年余にわたる惨劇と混沌の歴史を、社会の最小単位である家族(旅芸人一座)の視点から描き、さらに神話を追体験させることに…

 『SUPER 8』

監督:エミール・クストリッツァ「ウンザ、ウンザ」のリズムに乗って陽気に突っ走るクストリッツァ版『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』。メンバー紹介とライブと楽屋風景が、クストリッツァ作品同様、いかがわしさ全開のエネルギッシュな演出で展開され…

この日は何も観ず。夜、元ドリフターズのリーダー・いかりや長介氏の訃報をTVで知る。「全員集合」は子供の頃、夢中になって観ていたTV番組の一つだった。長さん、お疲れ様!合掌。

 『1936年の日々』

監督:テオ・アンゲロプロスファシズム政権樹立直前のギリシャの混沌とした政治状況を描くことで、現・軍事独裁政権をアイロニカルに批判した硬質な映画。と言っても、劇中では何ら気の利いた説明が入るわけではなく、政治家を人質に刑務所の一室に篭城した…

 『極私的エロス・恋歌1974』

監督:原一男昔の恋人との繋がりを得る為にキャメラを回す、という口実で公認(?)ストーカーとなり、しかも今の恋人に録音係をやらせてしまう何とも大胆で破廉恥な恐るべきプライベート・フィルム。元恋人・武田美由紀の人間性が、生々しいやり取りの中で赤裸…

 『乾いた花』

監督:篠田正浩刑務所帰りのヤクザの虚無的な日々を描いたフィルム・ノワール。オクラ入りになった問題作という割には思ったより刺激的なショットが少ない地味な作品だった。強烈なのは主演の池部良だ。外界に馴染めない、否、馴染もうとしない男の孤独と苛…

 『人生は、時々晴れ』

監督:マイク・リー真っ暗闇の家族生活にトドメを刺さんと襲いかかる不幸な出来事が、思わぬ化学反応を起こして、一筋の希望の光をもたらす。どん底からの逆転劇をペーソスたっぷりに描いたマイク・リーならではのビターな人生讃歌。生々しいアップショット…

 『彼女について私が知っている二、三の事柄』

監督:ジャン=リュック・ゴダール夫に内緒で売春する妻を狂言回しに、パリの街、生活、アメリカ、ベトナム、思想、映画を語ってしまうゴダールの我がまま映像エッセイ。引用や難解な言葉を羅列しながら、同時に、映像は言葉では描写し切れないものをフォル…

河口湖の運動場で野球練習(2日間の合宿でしたが、都合で1日だけの参加)をみっちり5時間強してきました。久々に激しい運動をしたので、体ガタガタです。この日は天候が良く、富士山が素晴らしい偉容を見せていましたねぇ。眺めていると体が仰け反ってくるよ…

 『CURE』

監督:黒沢清人間の抑圧された殺意が引き出されて起こる惨劇を描いたサイコ・スリラー。初めて観る黒沢清作品。ショットの力強さと奇妙な編集のリズムに強く惹かれた。静かな映像でありながら、異様な緊張感があり、露骨に怖いショットよりも、その前後のシ…

この日は何も観ず。その代わりにようやく購入する事ができた『自虐の詩』(全2巻)を一挙読み。いやぁ強烈。下巻のラスト50ページは自分の4コマ漫画に対する価値観を一変させましたね。確かに凄い。本当にこんな展開で泣けるんだろうか?と、いぶかしみながら…

 『全身小説家』

監督:原一男癌に冒された、死にゆく作家・井上光晴を追ったドキュメンタリー。井上は語る、小説を書くというのは嘘を付くことだ、そして記憶の取捨選択によって綴られる自伝もまたフィクションなのだと。ならば、映像ドキュメンタリーも所詮は恣意的なもの…

 『攻殻機動隊』

監督:押井守TV版を観終えていたせいもあってか、前に観た時よりも遥かに深い充実感を得ることができた。情報の海から生まれた意思体「人形使い」と、ほとんど機械化した人間・草薙素子が、お互いに抱える生命体としての矛盾を「精神の融合」によって解消し…

 『男性・女性』

監督:ジャン=リュック・ゴダール映画と真面目(?)に戯れながら、ジャン=ピエール・レオに真顔で政治を語らせる別題『マルクスとコカ・コーラの子供たち』。理想としての社会主義=男性、現実としての資本主義=女性という図式が成り立つのだとすれば、痴話…

 『ほしのこえ』

監督:新海誠この作品を遠心分離機にかけると、小さな本体の傍らに『トップをねらえ!』と『新世紀エヴァンゲリオン』という大きな塊が現れます(笑)。確かに映像は綺麗なのですが、ただ綺麗なだけで、瞠目するような独創性というものはほとんど感じられませ…

冬が戻ってきたような厳しい寒気の一日。ほんの一瞬、天気雪が舞う。ちょっと感動。

 『海外特派員』

監督:アルフレッド・ヒッチコックさすがはヒッチコック。反ナチのプロパガンダ映画でありながら、極上の娯楽サスペンスになっている。虚虚実実の駆け引き、ウィットに富んだユーモア、人物造形の面白さと言った脚本の巧みさもさることながら、やはり、奇抜…

先日amazonに発注した「自虐の詩」。全然発送されないなぁと思っていたらショップから「取り寄せに4〜6週間かかる」とのメールが来ました。仕方がないのでキャンセル。ネットと地元の本屋に在庫を求めて探し回るしかなさそうです。早く読みたいぞ〜。

 『今のままでいて』

監督:アルベルト・ラットゥアーダ原題は『ナスターシャ・キンスキー』・・・なわけありませんが、それくらい彼女の魅力が全面に押し出されている作品です。あのマストロヤンニでさえも刺身のツマ程度の扱いなのだから恐れ入ります。近親相姦を匂わせるロリータ…

 『17歳』

監督:アルファロ・フェルナンデ・アルメロちょいとワケ有りの宿無し女が三人。罵り合い、貶し合い、笑い合いながら、離れそうで離れない、奇妙でパワフルなたった一日だけの旅を描いた小品。プロットは平凡だけれど、そこはやっぱりスペイン映画、どぎつい…

 『あじまぁのウタ』

監督:青山真治りんけんバンドの照屋林賢と、妻でヴォーカルの上原知子にスポットを当てた音楽ドキュメンタリー。ゆっくりとズームインし、ゆっくりとズームアウトしていく「浦風」のライブ映像。キャメラが唄のリズムと見事にシンクロした心地良いオープニ…