『アメリカの影』

監督:ジョン・カサヴェテス

ハリウッド・システムと相反する撮影方法で作られた革新的なアメリカ映画。俳優が明らかに演技をしているにも関わらず、あたかもそれが現実に起こった出来事のように生々しく映し出されているのが凄い。即興による演出と脚本だからこそ生まれる独特の雰囲気が、NYに生きる若者の姿をザラッとした質感と瑞々しさで鮮やかに描き出している。全体的にストイックな印象を受ける作風だが、突然表出する人種問題を、目の表情とアップショットだけの激しいカット割りで表現したシークエンスの息詰まるような緊張感は素晴らしい。チャールズ・ミンガスの乾いたトランペットの響きが、殺伐たる都会の冷たさと見事にマッチしている。80分弱という尺も丁度良い。っていうか、これ以上長いと退屈なだけかも(笑)。ヒロイン演じるレリア・ゴルドーニのチャーミングな笑顔が忘れ難い。

***********

盤質。インディーズ映画のパイオニアと言われるだけあってフィルム原版そのものが劣悪らしく、したがって画質も良くありません。ただ、この映画に関してはそれがマイナスとはならずに、かえって絶妙の雰囲気を醸し出すことに一役かっています・・・たぶん(笑)。