2003-01-01から1年間の記事一覧

 『突貫小僧』

監督:小津安二郎人さらいの大人が子供に翻弄されてしまう何とも大らかで微笑ましいコメディ短編。『生れてはみたけれど』で父親を演じていた斎藤達雄が本作でもヘンな顔を連発する。子供にせがまれ、苦し紛れにポーズを取ってごまかす「デンデン虫の顔」な…

 『柳川掘割物語』

週末は2本鑑賞。監督:高畑勲水郷・柳川の全てが分かると言っても良いくらい丁寧に撮られている良質のドキュメンタリー。自然と人間が一体となった柳川の合理的かつ健全な掘割機能の数々に圧倒される。路地裏のような場所がことごとく水路になっている光景に…

 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 9』

2本とも荒巻課長が主役というオヤジキャラ好きにとっては堪らない巻(笑)。1本目は荒巻が出張先の英国で警察汚職をあばくという痛快なお話。展開はかなりご都合主義的だけれど、クールな頭脳で淡々と緊急事態に対処していく荒巻の姿は文句なしに格好良い。素…

 『熊座の淡き星影』

監督:ルキノ・ヴィスコンティ近親相姦を扱った家庭悲劇。「死にゆく街」ヴォルテッラの寂寞とした風景、閑散とした大邸宅が醸し出す頽廃的な雰囲気は、古典劇を題材にした愛憎物語の舞台にぴたりとマッチしている。独特の空間・構図の美を感じさせるロング…

 新たに増えた銀盤

『黄金』『脱出』

この日は友人H氏と呑み会兼鑑賞会。まずは昨日届いたばかりの北米盤『Concert for George』を観る。ジョージ・ハリスンの一周忌コンサートを収めたDVDです。いや〜凄い。インド音楽による厳かなオープニングから、モンティ・パイソンの尻出し(笑)、息子ダニ…

 『浮草』

監督:小津安二郎「彩」と「艶」の映画。色彩と女優の"粋"が堪能でき、中村鴈次郎の"芸"に嘆息させられる映画。大映で撮っているからか、所々に小津調らしからぬ演出(俯瞰映像、黒澤ばりの豪雨、過剰なキスシーンと暴力シーン)があって、それが他の小津作…

 『東京の女』

監督:小津安二郎姉の秘密を知ってしまった弟が絶望から自殺してしまう救いのない短編。全編を覆っている暗いトーンの映像が、後年のやはり"東京"という言葉が題に入った『東京暮色』と重なる。『東京物語』といい"東京"がつく作品には"人間の死"というもの…

 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 8』

1本目は全編タチコマ尽くしの異色作。人工知能と自我についての知的でファニーなロボット達の哲学談義。タチコマの読唇術が『2001年宇宙の旅』のHAL9000を彷彿させてニヤリ。2本目はバトーが主役のビターなお話。脚本の完成度が高く、味わい深い人間ドラマに…

 新たに増えた銀盤

『修道女』

 『トラフィック』

監督:ジャック・タチタチの映画は不気味なほどに整理整頓されたホコリ一つ感じさせない清潔な映像が魅力的だ。タチ様式とも言える独特の洗練されたギャグの数々、偏執的な道具へのこだわりも素晴らしいの一言。それにしても・・・動かないキャメラ、モダン…

 『少女ムシェット』

監督:ロベール・ブレッソン究極のボクサー体型映画。厳格極まりないショット、無感情的で無機的な演出と編集が恐ろしいまでの緊張感を生んでいる。ムシェットの世界に対する憎悪の眼差し、一瞬見せる笑顔との対比が痛々しい。また、首から下、手や足のみを…

 新たに増えた銀盤

『ハモンハモン』『ウーマン・オン・トップ』『崖』『少女ムシェット』

 『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』

監督:小津安二郎子供の世界の常識と大人の世界の常識との間に生じるズレが引き起こす小さな諍いを、軽妙洒脱、苦味、温もりで描き出した小品。サイレントでありながら、子供たちの騒ぎ声や足音が聞こえてくるような活き活きとした描写が素晴らしい。力関係…

 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 7』

1本目は九課VSテロリストというアクション性の高い話。タチコマ大活躍。戦争映画のような演出で銃火器の描写も細かい。30分という尺に収まる話ではないが、核心部分をあえてウヤムヤにし、想像させることで巧くまとめている。2本目は機械の格好良さとおぞま…

 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 6』

1本目は「AKIRA」と「カッコーの巣の上で」がチラチラする電脳閉格症患者の施設が舞台。ルイーズ・フレッチャーそっくりの所長やチーフのようなヌボーっとしたデカイ子供が出てくる。またも「笑い男」に翻弄される九課。2本目はちょっと異色な感じ。ある電脳…

東京有楽町の朝日ホールで催された「小津安二郎生誕100周年記念国際シンポジウム」に行ってきました。2日間計16時間という長丁場。さすがに疲れましたが、それ以上に充実した時間を過ごすことができたので良かったです。とても貴重な体験でした。詳しい内容…

 『イルマーレ』

監督:イ・ヒョンスン時間を超えて文通する男女の心の交錯を描いた切ないSFロマンス。映像、セット、音楽、何もかもがファッショナブルに演出されていて、まるでトレンディ・ドラマのような体裁。いくら御伽噺とは言え生活臭皆無の室内にはゲンナリ。でもプ…

久しぶりに鎌倉へ行ってきました。小津安二郎が眠る円覚寺へ「小津詣で」をするためです。この日は素晴らしい冬晴れとあって、鎌倉は大変な賑わい。車だったので空いた駐車場を見つけるのに一苦労しました。行程を簡単に記すと、鶴岡八幡宮〜徒歩で北鎌倉〜…

 新たに増えた銀盤

『キェシロフスキ・コレクションII 「トリコロール」セット』『キェシロフスキ・コレクションIII 「愛に関する / 殺人に関する短いフィルム」セット』 セットを並べ「ウッヒッヒ」と独り愉悦に浸るコレクターの心理や如何に。近々「キェシロフスキ祭」と題し…

 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 5』

バーチャル空間の中、「笑い男」事件についての議論が全編にわたって延々と描かれていくという、これまた攻殻ワールドならではのユニークなエピソード。当然ながら現実のネッワーク社会をカリカチュアライズした内容になっている。2本目はバトーが主役のちょ…

 『リュミエールと仲間たち』

復元されたシネマトグラフを使って40人のシネアストが映画の父・リュミエール兄弟へ「1カット52秒」のオマージュを捧げる。あまりにも原始的なキャメラで撮った1分足らずの映像にもきちんと各監督の個性が出ているところが面白い。合間に挿入される監督達の…

 『神曲』

監督:マノエル・デ・オリヴェイラ聖書、哲学、ロシア文学、ポルトガル文学のテクストを縦横に引用、コラージュしながらキリスト教的な精神世界を語り、しいては欧州文明と人間の本質を顕わにしようという何とも大胆不敵にして繊細な映画。しかし、まったく…

 『ベッカムに恋して』

監督:グリンダ・チャーダ多民族国家イギリスが抱える社会問題を浮き彫りにしながら、爽やかに且つユーモラスに恋愛と家庭を描いていく青春映画の佳作。ヒロインのインド系イギリス人を演じるパーミンダ・ナーグラが良い。劇中どんどん魅力的になっていくの…

 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 4』

週末はレンタルDVDを2本観る。今回は2話ともアクション性が高い。「笑い男」編では地味だった素子が、その鬱憤を晴らすかのように暴れまくる。攻殻の重要な要素のひとつ「義体」にスポットを当てた『恵まれし者たち』が秀逸。人間と機械の関係をシニカルな笑…

 『かれらに音楽を』

監督:アーチー・L・メイヨ貧しい不良少年が名ヴァイオリニストの演奏を聴いて音楽に興味を持ち、温かく招き入れてくれた資金難に苦しむ音楽教室を何とか存続させようと奮闘する様を描いた音楽映画。内容的には如何にも古き良きハリウッド時代の教育映画、…

 新たに増えた銀盤

『ハメット』

 『ノン、あるいは支配の空しい栄光』

監督:マノエル・デ・オリヴェイラ見事な映画。一本の巨木を延々と映し出すオープニング・シーンの驚くべき吸引力。まるでアンゲロプロスの重厚さとタヴィアーニ兄弟の牧歌的な世界が融合したような映像感覚だ。カエターノ政権末期のアフリカ、泥沼の植民地…

 新たに増えた銀盤

『リュミエールの仲間たち』

 『まぼろしの市街戦』

監督:フィリップ・ド・ブロカいかにもフランス映画らしい粋なエスプリのきいた戦争寓話、そして諷刺喜劇の大傑作。戦場である街の中で繰り広げられる狂人たちの華やかな宴が、軍人の軍人たる行為をトコトン滑稽なものへと変えてしまう。国家的、社会的な価…