『少女ムシェット』

監督:ロベール・ブレッソン

究極のボクサー体型映画。厳格極まりないショット、無感情的で無機的な演出と編集が恐ろしいまでの緊張感を生んでいる。ムシェットの世界に対する憎悪の眼差し、一瞬見せる笑顔との対比が痛々しい。また、首から下、手や足のみを捉えるブレッソンならではの接写。このショットには本当にギョッとさせられる。なぜなら顔の表情や言葉以上に、これら手足には強烈な「人間の意志」が込められているからだ。最後でムシェットは死を儀式化し、神聖なものへ昇華させようとしながら、何度もやり直しをする。その激しい姿には、生への執着を持ちながらも死んでいくしかなかった少女の不条理な怒りと哀しみが刻まれている。残酷さと美しさが紙一重で共存する稀有な作品。