2004-05-01から1ヶ月間の記事一覧

 『害虫』

監督:塩田明彦これは塩田版の『テス』だ。美少女の受難譚。そう、かのグリフィスがリリアン・ギッシュを虐めて以来の伝統的な映画のモチーフである(笑)。簡潔な演出と静的なショットが生み出す心地良い映画のリズム。絶妙にズレていく反復ショットとか、意…

今日は友人H氏と恒例の呑み会兼鑑賞会。H氏持参のDVD『ラストサムライ』を鑑賞しました。ちょっと『ダンス・ウィズ・ウルブス』が重なって見えたりもしましたが、普通に楽しめる良質の娯楽アクション・ドラマに仕上がっています。類型的な物語とキャラクター…

BSで放送された内田吐夢の『大菩薩峠』を録画し忘れました。激しく鬱です(泣)。DVD化熱望〜!

 『座頭市牢破り』

監督:山本薩夫チャンバラ活劇としては物足りないけれど、農民VSお上という基本的な対立構造を軸に、非暴力主義の浪人、善を装ったヤクザの親分、市を狙う隻腕のチンピラが絡んでくる一筋縄ではいかないドラマ構成は面白かった。中間的な立場で揺れ動く市の…

 『野良犬』

監督:黒澤明元祖バティ・ムービー。物語構成の巧さとセリフの面白さ、とにかく脚本がお見事。そして胸焼けするほど脂ぎった黒澤演出!画が強い。過度に強調される夏の暑さも強烈。ぎらつく太陽と汗。三船敏郎の熱血演技は間違いなく映像の温度を上げている(…

 『大いなる幻影』

監督:黒沢清説話的な物語から極端に逸脱した、すっとんきょうな恋愛映画。2005年と微妙に近未来設定なのがミソ。淡々とした日常の断片の中に、さも当たり前のように顔を出すシュールな現象の数々が可笑しくもあり不気味でもある。一見ナンセンスだけれど、1…

 『人間は何を食べてきたか 第2巻』

今回は「乳製品」「ジャガイモ」「米」の3編。いずれも見応えのある面白い内容でした。中東ベドウィン族の石のように硬いチーズ(10年も保存がきく)。富士山の八合目よりも高い標高に暮らすアンデスの先住民(4,000m以上の高地であろうと北極圏であろうと栽…

 新たに増えた銀盤

「ルキーノ・ヴィスコンティ DVD-BOX Ⅲ」「ブリキの太鼓」(クライテリオン盤)

今週末は何も観れず。

 『ブラックボード 背負う人』

監督:サミラ・マフマルバフ戦争が生む社会的な悲劇を、ユーモアと諷刺をちりばめながら寓話的に描き出したオフビートなロードムービー。教育の道具としての黒板が、身を隠したり、病人を運ぶ戸板になったり、骨折の添え木や物干し代わりとして役立ってしま…

 『ヘカテ』

監督:ダニエル・シュミット人妻に溺れ、惑わされ、翻弄される男の愛の妄執を描いた恐ろしくも魅惑的なファム・ファタール映画。『ラ・パロマ』ほどのインパクト、面白さは感じなかったけれど、月光が照らすバルコニーでのラブシーンや、キスする男女の影だ…

 『沙羅双樹』

監督:河瀬直美何か実存主義的な視点を感じさせるドキュメンタリー・タッチの人間ドラマ。ミニマルな空間の中でゆったりと流れていく時間が心地良く、環境音と自然光、ストイックな演出が静かな緊張感を生み出している。奈良の街並み、路地、薄暗い旧家。物…

 『人間は何を食べてきたか 第1巻』

世界中の食文化を追ったドキュメンタリー。最も基本的な食物を紹介していく序章的なドキュメント「NHK特集 食のルーツ・5万キロの旅」、そして本章である「肉」と「パン」の2編が収録された見応えのある構成になっています。一番興味を引き、かつ鮮烈な印象…

 『ラ・パロマ』

監督:ダニエル・シュミット甘美でグロテスクな愛の幻想。「芸術が頽廃におちいるとき、それはバロックとなる」というニーチェの言葉はこの映画にピタリと当てはまる。過去への追慕、荒廃趣味、不安の感情といったデカダンスの要素が、緩慢な映像の流れと飛…

 『オール・ザット・ジャズ』

監督:ボブ・フォッシーブロードウェイ演出家の凄絶にして滑稽な生き様。死に向って突き進んでいく娯楽ミュージカルというのが屈折していて面白い。ロイ・シャイダーもハマリ役。くわえ煙草にしかめっ面。洗練と猥雑が同居しているような、異様なエネルギー…

 『野性の葦』

監督:アンドレ・テシネ政治闘争という社会状況が背景にあるせいか、雰囲気は暗めで、メランコリックな青春映画になっている。同性愛、政治観の相違などによって生じる複雑な心の交錯が、微妙な友情関係の中で展開していく様は、なかなかスリリングで面白か…

 『リバティ・バランスを射った男』

監督:ジョン・フォード大興奮!そして涙。西部劇の最高は『駅馬車』だと思っていたけれど、この作品は軽々とその上を越えて行く。そう今は断言したいくらいに感動してしまった。ジミー・スチュアートは素晴らしい、でも、そんなことには構っていられないほ…

 『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG 01』

ようやく借りることができました。なかなか渋いオープニング。ただ、前のヘンなCG素子の方がインパクトはあったかも(笑)。第1話は前シリーズの1話目の韻を踏んでいるような内容で、面白味はないけれど、プロローグとしては無難な仕上がり。女首相の存在が気…

 『夜』

監督:ミケランジェロ・アントニオーニ末期ガンの友人を見舞ったことから発露する欺瞞の夫婦関係が、緩慢な流れとともにジワジワあぶり出されていく、しかし決定的な破局には至らない、その曖昧さ、退屈さ、そしてスリリングさ。漠然とした孤独感と不安感が…

 『さすらい』

監督:ミケランジェロ・アントニオーニ反ロマンス的なリアリズムが描き出す不毛な愛の情景。広大で、貧しく、どんよりとした、寒々しい風景が主人公の孤独を鮮明に浮き上がらせる。奥行きのあるシンプルな構図のロングショットは、限りなく寂しいが、同時に…

 『河内山宗俊』

監督:山中貞雄純粋可憐な甘酒屋の娘のために命を投げ打つアウトローの物語。清々しくてちょっぴり切ない「伊達と酔狂」の世界。流れるような弾むような会話の切れ味、そのユーモアと皮肉と愛嬌の絶妙な混ざり具合に山中貞雄の粋をみる。薄汚れた浮世の中で…

 『丹下左膳余話 百萬両の壷』

監督:山中貞雄昭和モダニズムの香りが息づく軽妙洒脱な時代劇。小津安二郎といい、70年も昔の日本映画にはこんなにも洗練されたユーモア感覚があったのかと驚嘆しきり。まったくとんでもない面白さ!セリフが、ショットが、活き活きと躍動し爽やかな輝きを…

 『東京ゴッドファーザーズ』

監督:今敏堂々たる浪花節。正攻法の人間ドラマで題材としてはかなり地味だけれど、個性的な人物造形、細かいディテールの背景(とんでもない描き込み量!)、あり得ない偶然の連続、といった過剰な味付けによって見事なエンターテインメントに仕上がってい…

 『ハリーの災難』

監督:アルフレッド・ヒッチコック死体に翻弄される人々を描いた黒いユーモアの感覚が冴える小品。不条理でナンセンスな会話劇としての面白味はあるが、ヒッチコックらしからぬノンビリとした展開、地味な映像演出はいささか退屈だった。ただ、後からジワジ…

 新たに増えた銀盤

『山中貞雄日活作品集 DVD-BOX』

 『百貨店大百科』

監督:セドリック・クラピッシュ百貨店というより百顔店と言いたくなるような個性豊かな表情のオンパレードが楽しい。従業員が一致団結してこそ経営もうまくいく?いえいえ、そこはお仏蘭西、何よりも個人主義が優先される国。勝手気ままでチャーミングな人…

 『蜘蛛巣城』

監督:黒澤明激しい雨と霧と風、人物配置と構図の様式美、森を駆け抜ける騎馬武者、城内を埋め尽くす兵士、動く森のスペクタクル、躍動する軍勢を捉えたロングショット、突き刺さる無数の矢、三船敏郎の表情、あまりにもストレートで力強い骨太の映像。雰囲…

 『裏窓』

監督:アルフレッド・ヒッチコック動かない空間と主人公になりかわって視線が動きまわる、その観察眼的、ネットリ粘着質なキャメラワークが素晴らしい。スコプトフィリア(覗見症)とは"見る欲望"のこと。まさに映画的な素材の極めつけと言っても過言じゃな…

 『復讐するは我にあり』

連休中に観た映画は4本。監督:今村昌平緒方拳と小川真由美が絶品。この二人が絡むシーンはどれも見応えがある。外界と隔絶されたような狭くて薄暗い売春宿の造形も良い。目も心も吸い込まれてしまうような映像の濃密さはないけれど、陰惨で泥臭い物語とは相…