『夜』

監督:ミケランジェロ・アントニオーニ

末期ガンの友人を見舞ったことから発露する欺瞞の夫婦関係が、緩慢な流れとともにジワジワあぶり出されていく、しかし決定的な破局には至らない、その曖昧さ、退屈さ、そしてスリリングさ。漠然とした孤独感と不安感が全編にわたって不気味に寄り添う。昼の街をさまよう妻が遭遇する何の脈絡もない情景の数々とか、夜のパーティで夫婦の前に現れる謎めいた男女との奇妙なやりとりとか、現実であって現実ではない、夢や妄想の世界を見ているような錯覚を抱かされる。作品のほぼ中間に配置された、昼と夜のパートを繋ぐ妖しげな黒人のダンス・シーンも良い。ねっとりした濃密感とジャズの響きが、本作の不条理で物憂げな雰囲気にぴたりとマッチしている。シュールだ。

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盤質。まず驚いたのはアナモ仕様であること。I.V.C初の快挙か?(笑)。でも画質は悪いです。解像度、映像S/N、階調表現、いずれも甘いですね。それと画面サイズが正しくないような気がします。上下がちょっと狭いような・・・。本DVDの尺は116分。でも「ALL CINEMA」を見ると122分。どうやらPAL/NTSC変換マスターを使用しているみたいです(泣)。特典内容は『さすらい』と同じでした。