2004-01-01から1ヶ月間の記事一覧

キェシロフスキ祭は中休み。この日は地元・八王子のお隣、多摩市の「パルテノン多摩」へヴィスコンティの『白夜』を観に行ってきました。今回「ルキノ・ヴィスコンティ モノクロームの陰影」と題し、『熊座の淡き星影』『白夜』『若者のすべて』の3作品がラ…

 『殺人に関する短いフィルム』

キェシロフスキ祭、第5夜目。監督:クシシュトフ・キェシロフスキ本作で描かれる殺人と死刑、この二つの死を見詰めるシークエンスはありとあらゆる感情を麻痺させる。それは虚実の判別ができなくなって、朦朧となるくらいに衝撃的な映像である。こんなに厳し…

 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 13』

ようやく借りることができました。最後を飾るに相応しい劇的な、そして攻殻らしい虚虚実実を尽くした見応えのあるエピソード2本でしたね。1本目のタチコマには泣けました。感傷とは無縁のクールな作品だっただけに最後の最後で情緒的にこられるとやっぱり効…

 『終わりなし』

キェシロフスキ祭、第4夜目。監督:クシシュトフ・キェシロフスキ今まで観てきたキェシロフスキ作品の中で最もペシミスティックな色合いが強い作品。キャメラを見据える死者の独白から、死者の主観へと切り替わって、死者の妻の物語が始まり、最後に監督(神…

 『偶然』

キェシロフスキ祭、第3夜目。監督:クシシュトフ・キェシロフスキ3つの「if」によって描かれる青年の運命の顛末。撮影当時の混沌としたポーランド情勢に対する怒りとも絶望とも取れる痛烈なアイロニーに満ちた恐ろしい悲劇だった。非常に重苦しい内容ではあ…

 『アマチュア』

キェシロフスキ祭、第2夜目。監督:クシシュトフ・キェシロフスキ平凡なサラリーマンが、赤ん坊を撮るために買った8ミリ・キャメラにどんどんのめり込んで、家庭不和を招く、という物語展開や、社会主義体制下における映画撮影の困難さを、工場内の映画クラ…

正月から読み始めていた谷崎潤一郎の「細雪」を読了しました。いや〜面白かったです。没落した旧家の4姉妹(実質的には3姉妹)の物語。流麗かつ柔らかな筆致によって紡ぎ出される「おんな文化」と「上方文化」。言葉や地名に馴染みがないので最初は読み辛か…

 『傷跡』

今夜からキェシロフスキ祭。監督:クシシュトフ・キェシロフスキ国営事業と住民と家族の問題に忙殺される工事責任者を追ったドキュメント風人間ドラマ。体制側に盲従できない官僚によってあぶり出されていく国の、柔軟性の欠乏、密室的な行政、言論の自由の…

 新たに増えた銀盤

『今のままでいて』『狩人の夜』

 『グロリア』

監督:ジョン・カサヴェテス少年と女ギャングの逃避行。まさにジーナ・ローランズの独壇場。恐るべき吸引力を放つ女優の一挙手一投足に目も心も釘付け。消えることのない不安と困惑の表情から次々と繰り出される大胆な行動、そのコントラストが強烈。マンハ…

 『ジョン・カサベテスのビッグ・トラブル』

監督:ジョン・カサヴェテスわっはっはっ!こりゃ参った。善良な保険マンが子供の学資の為にズルズル犯罪に巻き込まれていく。その手引きをするのは、胡散臭さ全開のピーター・フォークとキュートなブロンド熟女。なんだカサベテスもヒッチコックが好きなん…

今日は恵比寿ガーデンプレイスに『10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス』を観に行ってきました。さすがに平日の昼間とあって客足はまばら、多分20人もいなかったと思います。で、かなり長い予告編(『グッバイ、レーニン!』という作品が面白そう!)を挟…

 『過去のない男』

監督:アキ・カウリスマキこの映画は沢山の"唐突"によって成り立っている。記憶喪失になるのも、脈が停止したあとに起き上がるのも、川辺で寝ているのも...(中略)...銀行強盗も、妻に良い男がいるのも、寿司を食べるのも、み〜んな"唐突"だ。それが…

 『アメリカの友人』

監督:ヴィム・ヴェンダースヴェンダースがヒッチコックをやったら?平凡な生活を営む額縁職人が、ある出会いをきっかけに暗殺者へとなっていく。穏やかに、緩やかに、張り詰めた緊張と光の映像美と共に。サスペンスであってサスペンスでないような奇妙な感…

 『ターミネーター3』

監督:ジョナサン・モストウ笑いと破壊でストレス解消!なのかと思いきや後半エライ深刻になってしまうシリーズ全5作の第3作目、ってまだ続くんかい!(笑)という冗談はさておき・・・。アクションはド派手にも関わらず何か物足りなさを感じる。旨味が薄い。女タ…

 『アバウト・シュミット』

監督:アレクサンダー・ペインアメリカ映画らしい笑いとペーソスに溢れた良質の人間ドラマ。作風はサム・メンデスの映像感覚にコーエン兄弟のオフビート感覚を足して二で割った感じ(笑)。今回のジャック・ニコルソンはひたすら抑えた演技に徹している。「永…

 『ベルエポック』

監督:フェルナンド・トルエバ独裁政権が終わり、第二共和国が誕生した1931年春。混迷期直前の僅かな時期、このスペインの"古き良き時代"を、4姉妹と1人の青年が織り成す艶やかな人間模様に象徴させて描いた大らかな艶笑劇。のどかな地方地主の屋敷で、とび…

 『カヴァレリア・ルスティカーナ』

演出:フランコ・ゼフィレッリマスカーニの歌劇を映画的に表現した、いわゆるオペラ映画。『カヴァレリア・ルスティカーナ』と言えば間奏曲。チアン・ウェンの『太陽の少年』や『ゴッドファーザー?』でも印象的に使われていた何とも美しい旋律を持った曲です…

 『六月の蛇』

監督:塚本晋也セックスレス夫婦に内在するエロティシズム、その妄想と解放を描いた、ある種痛快な官能活劇。これは塚本晋也によって大胆に変奏された『アイズ・ワイド・シャット』だ。このキューブリックの遺作のラストと『六月の蛇』のラストで示される結…

 新たに増えた銀盤

『Ikiru - Criterion Collection』『Pale Flower』『Cure』

 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 12』

物語はいよいよ『笑い男』事件の核心へ。物語の中に存在するトリックと映像演出のトリックが複雑に絡み合って展開していく非常に見応えのあるエピソードになっている。そして事態はますます混沌状態、九課は崩壊の危機に。その時タチコマは養護施設の雑用マ…

 『脱出』

監督:ハワード・ホークスシンプルなプロットと限定された空間、だからこそ際立つ俳優の個性。中でもローレン・バコールの存在感が素晴らしい。初登場シーンの流し目と煙草を吸う所作には震えが走った。なんなんだこの格好良さは!ボギーとは勿論のこと、黒…

 『修道女』

三連休の間に観た映画は2本。監督:ジャック・リヴェット外界から隔絶された世界に否応無く押し込められてしまった少女の抵抗の日々を描いた寓話的な悲劇。ドラマティックな感情を排した厳格な演出、ほとんど室内だけで展開していくスタイルが、恐ろしいまで…

 『ハメット』

監督:ヴィム・ヴェンダースヴェンダースの呪われた映画。でも個人的には大好きな作品。猥雑な活気とけばけばしい色彩に満ち溢れ、迷路のように狭く入り組んだチャイナタウン。セットならではの味わい、ライティングもばっちりキマッている。緩慢なリズム、…

 『和製喧嘩友達』

監督:小津安二郎良い!チャップリンのような笑いとペーソス。男二人に女が一人、当然、彼女を巡って殴り合い。仲間は言う「喧嘩は神聖なんだ、放っておけ」、小津とアメリカ映画の深い関係。列車とトラックが併走する最後のシーンでヴェンダースの『さすら…

 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 11』

1stシーズンの中心軸である「笑い男」事件もいよいよ大詰め。急展開する事態。劇場版の最後を彷彿させるアームスーツと素子のアクションも見応えがある。この戦いで駄目になった義体を交換する一連のシーンの脳生理学的なネタを扱ったちょっぴりユーモラスな…

 『歓楽通り』

監督:パトリス・ルコントう〜ん、脚本と演出があまりにもちょっと・・・。ルコント監督の通俗性には馴染めませんでした。小刻みに揺れ、妙なズームを多用するキャメラにも閉口(特に最後が酷い)。ヒロインの魅力もいまひとつ。表情や所作にもっとガツーンとく…

 『儀式』

監督:大島渚戦後日本の思想闘争の歴史を、家父長制度(=日本帝国主義?)の大家族に置き換え、鋭い抽象性をもって表現した硬派な作品。国家の欺瞞を「モラルが欠如した儀式」を通して暴いていくという着眼点が凄い。花嫁不在で進行していく披露宴のシーン…

 『黄金』

監督:ジョン・ヒューストン砂塵のように激しく巻き上がりながら消えてゆく男達の欲望の夢を描いた痛快な寓話。荒々しい男性的なタッチの演出と映像、明快なメッセージ性が魅力的。音楽も良い。ボギーの欲に正直すぎる憐れな小人(背丈も器も小さい^^;)の演…

 『東京物語』

監督:小津安二郎もう何も言うことはありません。ここまで完璧に調和が取れ洗練された映画的世界が作られたことは本当に奇跡だと思う。それが家族という人間社会の最も基本的なテーマを扱っているということにより一層の感動を覚えずにはいられない。最後、…