キェシロフスキ祭は中休み。この日は地元・八王子のお隣、多摩市の「パルテノン多摩」へヴィスコンティの『白夜』を観に行ってきました。今回「ルキノ・ヴィスコンティ モノクロームの陰影」と題し、『熊座の淡き星影』『白夜』『若者のすべて』の3作品がラインナップ。都合で一作品に絞らざるを得なかったので、最も劇場のスクリーンで観ておきたかった『白夜』をチョイス。これはDVDのクオリティが悪かったから、という理由もあっての選択です。寝坊したせいで出発時間が遅れてしまい、交通渋滞にもハマったりで、入館したのは何と上映開始の僅か1分前!あやうく『コレリ大尉のマンドリン』の悲劇を繰り返すところでした(ってこのネタが分かる人はいるのだろうか^^;)。そんなわけで落ち着く暇もなく『白夜』鑑賞と相成ったのでした。で、感想なんですが・・・いや〜もぉ本っ当に最高!!っていうか最低とも言えるな(笑)。マストロヤンニのあまりの惨めさに今回も涙、涙の大泣き。エンドロールがないので、すぐに場内が明るくなるのが恨めしいくらいでした。げに恐るべきはヒロイン演じるマリア・シェルのかまとと振り。表情といい所作といいセリフ回しといい、まさに「西洋の大竹しのぶ」と呼ぶに相応しい(笑)。観ていて背筋の寒くなるようなシーンもチラホラありましたね。女は怖い。彼女との対比という位置付けで登場するうらぶれた娼婦の方がよほど清らしい存在に思えたのは単なる錯覚だったのか?それともヴィスコンティの辛辣なアイロニーが隠されていたのか?それにしても、街の造形や照明の素晴らしいこと。セット撮影の魅力が遺憾なく発揮されていますね。濃密な舞台的空間美に惚れ惚れしちゃいます。その一方で曇ったガラスや焚き火や風の効果音などの寒い冬の夜を感じさせる演出が細かく配置されている点も見事です。クライマックスの雪は、おそらく映画史上でも指折りの降雪シーンではないでしょうか。人工の雪が信じがたい美しさで舞い落ちてきます。このシーンを観れただけでも今回劇場に足を運んだ甲斐があったというもの。本当に美しいです。他にもジャン・マレーの男っぷり、灯台の明かりの演出、騒がしいマダム、マストロヤンニのヘンな踊り(館内爆笑の渦でした)などなど、愛すべき細部が沢山あってとにかく良い作品です。ヴィスコンティの中でも上位3本に入る大好きな作品ですね。