『終わりなし』

キェシロフスキ祭、第4夜目。

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ

今まで観てきたキェシロフスキ作品の中で最もペシミスティックな色合いが強い作品。キャメラを見据える死者の独白から、死者の主観へと切り替わって、死者の妻の物語が始まり、最後に監督(神?または観客の視点そのものとも言える)の主観となって終局を迎える悲劇。この作品でもふとした過ちやちょっとした状況の変化によって運命を狂わせてしまう人間の姿が、極めて繊細なタッチによって描かれていく。それにしてもキェシロフスキが捉える人物の生々しさは凄い。慎ましやかな表情と所作なのに、人間が持つ多面的な複雑さが濃厚に感じ取れる。感じずにはいられない。この映像のただならぬ緊張感と人間への真摯な眼差しがキェシロフスキ映画の一番魅力的な部分と言えるかもしれない。孤独な妻を演じるグラジナ・シャポーフスカが圧倒的に素晴らしい。

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盤質。『アマチュア』とほぼ同じ印象の画質ですが、白点ノイズがやや目立ちました。