『儀式』

監督:大島渚

戦後日本の思想闘争の歴史を、家父長制度(=日本帝国主義?)の大家族に置き換え、鋭い抽象性をもって表現した硬派な作品。国家の欺瞞を「モラルが欠如した儀式」を通して暴いていくという着眼点が凄い。花嫁不在で進行していく披露宴のシーンは圧巻だった。冷ややかな緊張感が一貫して漂う映像、虚構の様式美を感じさせる戸田重昌の美術、不安感を煽る武満徹の音楽、いずれも素晴らしい。ただ激動の時代をまったく知らずに育った世代にとっては、あくまで過去認識のための異色教材の一つでしかないような気がする。本作には小津映画のような現代性はない。