『アマチュア』

キェシロフスキ祭、第2夜目。

監督:クシシュトフ・キェシロフスキ

平凡なサラリーマンが、赤ん坊を撮るために買った8ミリ・キャメラにどんどんのめり込んで、家庭不和を招く、という物語展開や、社会主義体制下における映画撮影の困難さを、工場内の映画クラブというミニマルな形に移し変えて表現したこと、などはほとんどどうでも良いことなのかもしれない。この作品で最も感動的なのは、キャメラを手にした人間が、ありのままの世界を捉えようとする、その素直で無邪気な眼差しそのものにあると思う。『デカローグ』のような殺風景な団地、そこで暮らす人々のささやかな日常、指で作った構図の中の風景がそのまま映画の風景ショットになるところ、映画クラブに集う人達の表情、そういった瑣末な部分の映像にキラリと光るものがある。そしてそれは劇中、主人公が撮る映像とピッタリ重なる。キャメラのレンズを通すことで、普段見慣れていた筈の情景は、違う何か特別なものへと変化する。本作は、その「新しい目」に取り憑かれてしまった男の可笑しくて哀しい記録。こんなに愛おしい映画はそうそうあるものじゃない。傑作。

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盤質。昨夜の『傷跡』よりはだいぶ良い感じ。S/Nや発色は今ひとつですが、色滲みはなく、解像度もそれなりに高いです。音は若干ヒスノイズがありますが、普通のレベルと言えるでしょう。