『過去のない男』

監督:アキ・カウリスマキ

この映画は沢山の"唐突"によって成り立っている。記憶喪失になるのも、脈が停止したあとに起き上がるのも、川辺で寝ているのも...(中略)...銀行強盗も、妻に良い男がいるのも、寿司を食べるのも、み〜んな"唐突"だ。それが面白い。笑ってしまう。そして暖かい。気候も生活も寒そうだけれど、人も映像もポカポカしている。これがカウリスマキなんだ。「人生は前にしか進まない」「うつ伏せで死んでいたら仰向けにしてくれ」。富や過去なんて関係ない、どうせなら楽天的に進もうじゃないか!音楽と酒とユーモアと共に!!最後の結末は"唐突"なんかじゃない。当然の結果が待っている。ゆっくりと横滑りしていく貨物列車のリズムこそ今の映画に必要なものなのかもしれない。

***********

盤質。画質は良くありません。S/N、解像度、発色いずれもピリッとしない甘い画です。よほど質の悪いフィルム素材からマスターを起こしたのでしょうか。先発されていたフランス盤の画質が素晴らしかっただけに残念ですね。ただ日本語吹替え音声の収録(最初で最後かも?)、幻の日本触媒CM映像やカティ・オウティネンのインタビューなど、特典が充実しているので、十分満足のいくDVDではありました。せっかくなので仏盤との比較記事を近々アップする予定です。