『沙羅双樹』

監督:河瀬直美

何か実存主義的な視点を感じさせるドキュメンタリー・タッチの人間ドラマ。ミニマルな空間の中でゆったりと流れていく時間が心地良く、環境音と自然光、ストイックな演出が静かな緊張感を生み出している。奈良の街並み、路地、薄暗い旧家。物語というよりは、情景詩のような趣がある。個人的にはとても好きなタイプの映画。ただ、登場人物たちの抑圧された内面が解放される「バサラ祭」の踊りが力強さに欠けていたのは残念。副次的な役割である筈の雨が主役になっちゃっている。