『野良犬』

監督:黒澤明

元祖バティ・ムービー。物語構成の巧さとセリフの面白さ、とにかく脚本がお見事。そして胸焼けするほど脂ぎった黒澤演出!画が強い。過度に強調される夏の暑さも強烈。ぎらつく太陽と汗。三船敏郎の熱血演技は間違いなく映像の温度を上げている(笑)。闇市をさまよう場面のめくるめくモンタージュが印象的。いつ終わるともしれないネチネチとしたいやらしい描写に刑事の本質がよく出ていると思う。一癖ある脇役たちの存在も効いていて、中でもスリのおばさんと桶屋のオヤジと劇場の演出家(デカダン千秋実!)が良い味を出していた。終始イジケ顔の淡路恵子も可愛い。

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盤質。解像度、コントラスト、映像S/Nともにやや甘い感じですね。フィルム傷も散見されます。『隠し砦〜』以降のCRI盤黒澤作品の中では最低のクオリティかも。とは言え十分に満足できるレベルの画質ではあります。音はこもり気味で、セリフが聞き取り辛いです(毎度のことなんですが^^;)。