『ラ・パロマ』

監督:ダニエル・シュミット

甘美でグロテスクな愛の幻想。「芸術が頽廃におちいるとき、それはバロックとなる」というニーチェの言葉はこの映画にピタリと当てはまる。過去への追慕、荒廃趣味、不安の感情といったデカダンスの要素が、緩慢な映像の流れと飛躍するシークエンスの中に悠然と跋扈している。この大胆さと繊細さ。韜晦によって映画と優雅に戯れるシュミットの妖しげな世界にメロメロ。『まわり道』でヘッポコ詩人を演じていたペーター・カーンが最高。この表情はクセになる。音楽も素晴らしく、スイスの山をバックに男女が「永遠の愛」を確かめ合うアリアの場面が忘れ難い。デヴィッド・リンチは明らかに本作の影響を受けていると思うのだけれど、それに関する発言ってしているのだろうか。

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盤質。酷い画質です(泣)。解像度、発色ともにVHSレベルで、映像S/Nも大変なことになっています。白点ノイズも盛大。これでは名手レナート・ベルタキャメラも台無しって感じですねぇ。