『河内山宗俊』

監督:山中貞雄

純粋可憐な甘酒屋の娘のために命を投げ打つアウトローの物語。清々しくてちょっぴり切ない「伊達と酔狂」の世界。流れるような弾むような会話の切れ味、そのユーモアと皮肉と愛嬌の絶妙な混ざり具合に山中貞雄の粋をみる。薄汚れた浮世の中で、原節子(15歳!)だけは別世界の住人であるかのような孤高の存在感を誇っていて、それが彼女のもつ聖性を一層際立たせている。あらゆる表情が美しい。そう、美しいと言えば、沈み込む原節子の横顔を捉えたクローズアップの背後にふわふわと舞い落ちる綿のような雪の質感。暗い場面なのに思わず微笑んでしまった。凄い。

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盤質。残念ながら画質、音質ともに良くありません。原版の状態がよほど悪いのでしょうか。セリフも所々不明瞭で、日本語字幕の助けが必要です。特典は山中貞雄の作品『磯の源太』と『怪盗白頭巾』の部分映像が収録されています。どちらも短すぎて、ちょっと物足らなかったですねぇ。