『トラフィック』

監督:ジャック・タチ

タチの映画は不気味なほどに整理整頓されたホコリ一つ感じさせない清潔な映像が魅力的だ。タチ様式とも言える独特の洗練されたギャグの数々、偏執的な道具へのこだわりも素晴らしいの一言。それにしても・・・動かないキャメラ、モダンな配色、シンプルで軽快な音楽、素早くリズムカルなカット割り、機械的な人の動き、スタンダード画面、そして不気味なくらい清潔な映像、観れば観るほど感じられてならない小津安二郎後期カラー作品との相似点。本作はいつも通りにさり気な〜く奇行をとるユロ氏と、派手に奇行をとるヒロイン・マリア・キンバリーとの組み合わせの妙が面白い。彼女が黄色いオープンカーを猛スピードで乗り回す様は何ともデンジャラスで爽快。しかも訛りの強い英語を喋るアメリカ人で、次々と衣装を変えていく。まるでオードリーみたいだ。