『大人の見る絵本 生れてはみたけれど』

監督:小津安二郎

子供の世界の常識と大人の世界の常識との間に生じるズレが引き起こす小さな諍いを、軽妙洒脱、苦味、温もりで描き出した小品。サイレントでありながら、子供たちの騒ぎ声や足音が聞こえてくるような活き活きとした描写が素晴らしい。力関係を示すヘンテコな遊び(勝手に命名「神父とゾンビ」ごっこ!)には大笑いさせられた。子供には子供の奇妙で不条理な上下関係ってものがあるのだ。頻繁に画面を横切っていく一両電車が良い。ある種痛快とも言える視覚的リズムを生んでいると思う。ちなみにジャン・ヴィゴの『新学期・操行ゼロ』は、本作とほぼ同じ時期に撮られている。