『ほしのこえ』

監督:新海誠

この作品を遠心分離機にかけると、小さな本体の傍らに『トップをねらえ!』と『新世紀エヴァンゲリオン』という大きな塊が現れます(笑)。確かに映像は綺麗なのですが、ただ綺麗なだけで、瞠目するような独創性というものはほとんど感じられません。携帯とメールによって意思の相互伝達が容易になった現代を逆手に取ったSFプラトニック・ラブなのですが、主役である男女の言葉のやりとりがあまりにも稚拙なので、感情移入することができません。凝った世界観や設定も25分という尺では抽象的にならざるを得ません。戦闘シーンの演出も何かリズムに違和感があって格好悪いです。声優の演技も苦しいですし、音楽も聴こえは良いのですが平板な印象を受けます。唯一、背景は美しく魅力的でした。これを一人で製作した新海誠氏のエネルギーは敬服に値しますが、やはり全編から滲み出る素人臭さはいかんともしがたいですねぇ。この作品に5,800円の価値があるかと言えばちょっと、いや、かなり疑問です。CGを描く能力と、それを動かす能力(これは演出力と言い換えても良いかも)は全く別物なんだということが改めて良く分かる作品でした。それとこの作品はPC鑑賞が最適ですね。大きな画面だと途端にボロが出ます。ん〜何だか悪口だらけの感想になってしまいました。でも正直な気持ちであることは間違いありません。