『男性・女性』

監督:ジャン=リュック・ゴダール

映画と真面目(?)に戯れながら、ジャン=ピエール・レオに真顔で政治を語らせる別題『マルクスコカ・コーラの子供たち』。理想としての社会主義=男性、現実としての資本主義=女性という図式が成り立つのだとすれば、痴話喧嘩の末に男を射殺する女や、「結婚してくれ!」との男の言に「時間がないから後でね」と答える女や、トイレの中でキスする男同士といった突拍子もないシーンの数々は、当時の複雑な思想状況をユーモラス(或いは映画的)に象徴化しているのかもしれない。そして、その混沌はドキュメントとフィクションの境界が曖昧になっている本作の作風そのものでもある。章立てされた各シーンは一見、繋がりがないような印象を受けるが、中心部にはゴダールの政治への提言という太い芯がしっかり通っているのが分かる。俳優たちの活き活きした姿や、ユニークな編集は楽しめるけれど、政治色が強いために古臭く感じられるのは致し方ないところか。