『乾いた花』

監督:篠田正浩

刑務所帰りのヤクザの虚無的な日々を描いたフィルム・ノワール。オクラ入りになった問題作という割には思ったより刺激的なショットが少ない地味な作品だった。強烈なのは主演の池部良だ。外界に馴染めない、否、馴染もうとしない男の孤独と苛立ちを、危うい色気と静かな凄味でもって見事な存在感を示している。それと加賀まりこ(若い!)。演技はちょっと微妙だったけれど、表情だけなら池部以上に個性的な魅力を放っていた。ハードボイルドとロリータ、一見、無茶な組み合わせが意外にハマッちゃっているのだから面白い。胃を絞るような武満徹の音楽も雰囲気抜群。ところでこの作品、花札賭博のシーンがやたら出てくるのが特徴で、勝負の際の「どっちもどっちもどっちも♪」という掛け声の反復が耳に付いて離れなくなる。何か妙に音楽的なんだよなあ(笑)。

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盤質。若干シュートが目立ちますが、非常に鮮度の高い、キレのある黒白映像です。HVE製の日本映画コレクションはいずれも高品質で信頼できます。今後のラインナップにも期待ですね。