『極私的エロス・恋歌1974』

監督:原一男

昔の恋人との繋がりを得る為にキャメラを回す、という口実で公認(?)ストーカーとなり、しかも今の恋人に録音係をやらせてしまう何とも大胆で破廉恥な恐るべきプライベート・フィルム。元恋人・武田美由紀の人間性が、生々しいやり取りの中で赤裸々に暴かれていくが、それが膨大な映像記録の一断片に過ぎないような、或いはそう思わせるかのような、何やら雑な印象を受ける編集になっているところが、巧妙でもあり歯痒くもある。しかし本作が2人の女性の出産シーンに及ぶに至って、もうそんなことはどうでもよくなってしまう。女性達だけで行われる自宅出産。少しピンボケの映像によって捉えられた生命誕生の瞬間。そこにはどんな理屈も感情もない、純粋な感動だけがある。神聖な儀式の前で、寡黙に、ただひたすらキャメラを回し続けていた原一男の心境や如何に。