『彼女について私が知っている二、三の事柄』

監督:ジャン=リュック・ゴダール

夫に内緒で売春する妻を狂言回しに、パリの街、生活、アメリカ、ベトナム、思想、映画を語ってしまうゴダールの我がまま映像エッセイ。引用や難解な言葉を羅列しながら、同時に、映像は言葉では描写し切れないものをフォルムとして表現することができる、と実験的手法の数々を駆使していく。既成の映画文法を破壊して再構築していく挑発的なスタイルは、あからさま過ぎるが故にかえってある種の清々しさを感じさせる。その方向性は、アメリカナイズされた世界を壊し、再生するための象徴として繰り返し出てくる都市開発の工事風景にも繋がっている。囁くように呟かれる過激なナレーションは、商業映画というスタンスを自覚したゴダールの屈折した遊び心なのだろうか。