『今のままでいて』

監督:アルベルト・ラットゥアーダ

原題は『ナスターシャ・キンスキー』・・・なわけありませんが、それくらい彼女の魅力が全面に押し出されている作品です。あのマストロヤンニでさえも刺身のツマ程度の扱いなのだから恐れ入ります。近親相姦を匂わせるロリータ・ロマンスですが、細かい心理描写はなく、脚本もやや大雑把なので、尚更ナスターシャ嬢だけが印象に残るという仕掛けです。これならヌードがやたらと出てくるのも当然と言えるでしょう。ただ凡庸に終わらないのが、ラットゥアーダ監督のお茶目なところで、後半に見せるナスターシャ嬢の常軌を逸した痴態ぶりは、可愛いを通り越して怖いです(笑)。エンニオ・モリコーネの音楽は、合っているような合っていないような微妙な感じを受けました。楽曲自体は良いのですが。それと話の筋とは全然関係ありませんが、競馬場の馬券オヤジとバーで煙草を無心する浮浪者(特典によると監督自身が演じていたらしい)が妙に味があって忘れ難いです。

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盤質。ヌケが悪い低解像度の映像(特に屋外シーンが目立つ)、褪色、画面の細かいガタツキ、など残念ながら高画質とは言えません。音も鮮明さに欠けています。本来109分(105分?)ある筈の尺が100分になっているのでPAL/NTSC変換マスターを使用している可能性が大ですね。LD版は英語吹替え音声だったので、やはりイタリア語音声のマスターは欧州から調達するしかなかったということなのでしょうか。もし2,500円という価格設定の為に十分なオーサリングができなかったのだとすれば、ファンとしては4,800円でも良いから手間隙かけたDVDに仕上げて欲しかったというのが正直なところかも。とはいえオリジナル音声、無修正でのリリースは大いに評価したいですね。ちなみに特典の予告編はなかなかに高画質でした(^^;


↑本編画像



↑予告編画像


えっと、画質の違いがよく分かりませんねぇ(笑)。実際には解像度に差があって予告編の方がすっきりヌケの良い映像です。これはまぁビットレートも関係しているのでしょう。問題なのは、本編の方が人物、というか画面全体が僅かながら横潰れしているように感じられることです。ロングショットで人物を捉えた映像でそれが顕著に分かります。それとナスターシャ嬢の鼻に注目して下さい。上の本編画像の方が、下の予告編より高く感じられませんか?恐らくオリジナルの画面サイズはアメリカン・ビスタ(1×1.85)だと思うのですが、このディスクの本編はそれよりも若干細くなっているような印象を受けます。これはPAL/NTSC変換マスターを使ってスクイーズ仕様にした際に起きる弊害の一つです。同じ例では国内盤の『白夜』があります。これは推測でしかありませんが、もしPALマスターを使っているのなら、ジャケットか封入書にきちんと明記して欲しいですねぇ。メーカーに聞いてみようかなぁ。