『Follow Me Quietly』 ■■■■

v-erice2007-02-28


監督:リチャード・フライシャー

謎の絞殺魔(!)を追う探偵を描いたスリラーで、全編スタジオ撮り、尺はたったの60分しかない。プロットは平凡だけれど、映像と演出にはひと工夫もふた工夫もある"立派なB級フィルム"だ。のっぺらぼう人形なんていうB級テイスト溢れる小道具や、ちょっと野暮ったいところが如何にもB級的ヒロインなドロシー・パトリックが良い。特筆に価するのが終盤の製鉄工場で繰り広げられる犯人(伊藤雄之助みたいな味のある顔をしたオッサン)と主人公の追いつ追われつで、劇的アクションが階段という装置によって上下に展開していく視線と構図の面白さ(俯瞰とあおりの対立構造)、銃撃で穴があいたパイプから雨のように水が吹き出るショット(物語中盤の豪雨の描写とのイメージの類似性)、ヒッチコックを思わせる急転直下の決着など素晴らしく見応えのあるシークエンスになっている。興味深いのはストーリー製作者として参加しているアンソニー・マンの存在。なるほど、確かに終盤の上下軸にそって展開される活劇や落下の主題はマンの十八番だし、製鉄工場での追っかけは『Tメン』('47)の最後を彷彿させる(ついでに言うと『ロボコップ』も思い出した)、それに主人公が贔屓にしている飲食店もテーブル席が階段を下った低い場所に設置されている一風変わったデザインで、ここにもマン的な高低差を使った空間造形のこだわりを感じ取ることができる。

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盤質。画質良好。クッキリスッキリ良質の黒白映像。音声は英語と仏語吹替えのニ種類。仏語字幕はオン・オフ可能です。映画評論家(?)による短い解説映像が付いていますが仏語なのでチンプンカンプン。日本では勿論のこと北米でもDVD化されていない(ビデオは出ている)レア作品なのでフライシャー・ファンの方や古典ハリウッド・スリラーに興味のある方は買っておいて損はないと思います。ていうかハッキリ言って超オススメです。