『バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版』 ■■□

監督:パーシー・アドロン

『完全版』との違いだが、まず冒頭のメイン・タイトルが黒字の『BAGDAD CAFE』(海外公開用タイトル)ではなく青字の『OUT OF ROSENHEIM』(正式タイトル)になっている。画面サイズが1:1.85(アメリカンビスタ)から1:1.78(HDの縦横比)にトリミングされている(本作は元々35mmで撮影されたものに天地マスキングを施して上映された)。黄色味がかった色調で統一された映像ではなく、よりナチュラルな色調へと再調整されている、以上の三点で編集自体に変更はない。本作を見るのはDVD版以来二度目だが、映像的なあざとさが薄まったせいで、個性的な人間たちが織り成す群像劇としての魅力がより強まった印象を受けた。ドラマとしての深みはそれほどないのだが主演のチャーミングなドイツ巨女マリアンネ・ゼーゲブレヒトを筆頭にキャスティングがとにかく良くて、中でもハリウッドの背景画家だったウェスタン・ブーツの男ジャック・パランスはその表情、所作、声、すべてが素晴らしく、この俳優の存在だけでも本作を見る価値があると断言してしまいたくなるくらいである。馴れ合いを嫌って出て行ってしまうミステリアスな女彫物師デビーを演じるクリスティーネ・カウフマンも個人的にはとても好きだったりするのだが、出番が少なすぎるのがちょっと残念だ。夕暮れ時のガススタンドをロングショットに収めたエドワード・ホッパー的情景や、ブーメランを飛ばすショットなど幾つか忘れ難いシーンもあるが、打ちのめされるような、あるいは偏愛したくなるような類の映画ではなく、単館系らしいこじんまりとした普通のイイ映画だな〜というのが正直な感想だ。

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紀伊国屋書店のブルーレイ第一弾。スゴイ!の一言。正直ここまでクオリティが高いとは思っていなかった。これぞハイデフな超高解像度、映像の細密感と発色のあまりの鮮やかさ、まさに溜息モノの美しさである。映像ソフトも遂にここまで来たかと感慨しきり。粒子感の強いザラザラした質感の映像も砂漠の外れの寂れたモーテルが舞台の本作にはよく似合う。高ビットレート収録されたリニアPCM音声も素晴らしい。ソフト再生直後に流れてくる「コーリング・ユー」には思わずゾクッとなった。環境音も恐ろしくクリアで生々しく響いてくる。第一弾に相応しいインパクトのあるソフト。作品ファンにとっては宝石にも等しい一枚なのではなかろうか。第二弾への期待は膨らむばかりだ。

アウターケース付きスリム・デジパック仕様


デジパックの中


ブックレット、初回特典ステッカー、バール・デルソールのクーポン券、ブルーレイ制作担当・山下氏のメッセージ・ペーパー