中野翠『小津ごのみ』読了 ○

著者の偏った関心や嗜好全開で小津映画のファッション、インテリア、雑貨、俳優の顔、声、所作などが語られている部分が良い。中には首を傾げたくなるような見解もあったが、己の感性にとことん正直な物言いはいっそ清々しい。小津映画の幾つかの場面における性的解釈への違和感には賛同。2003年の小津シンポジウムの際『晩春』の近親相姦的ニュアンスを語った吉田喜重に対してオリヴェイラが異を唱える場面があって、大いに共感したことを思い出した。本書の中でよく引用される「小津安二郎 -人と仕事-」がたまらなく読みたくなったのだが、この本はもう絶版久しく古書店で大変なプレミアになっているらしい。さすがに手が出ないので図書館をあてにするしかなさそうだ。小津が愛した「東哉」の陶器に興味が湧いたし、赤いヤカンはやはり持っていたいよな〜なんてことも思ったりした。

小津ごのみ

小津ごのみ