『非情の罠』

監督:スタンリー・キューブリック

50年代のキューブリック作品は本当に格好良い。凝った照明、ドキュメント風に切り取られたニューヨークの街並(この作品はカサヴェテスの『アメリカの影』より4年も前に撮られている)、ローアングルとミラーショットの多用、ボクシング場面の迫力あるモンタージュ、突如眼前に広がるマネキンの群れなど、とにかく映像に魅せられる。話が平凡でも、撮り方ひとつでいくらでもクールな映画になるのだなあと感心しきり。見事なレトリックによる短編小説を味わったような充実の67分だった。