『新のんき大将』

監督:ジャック・タチ

長編デビュー作。日本語字幕がなくても動きと音だけで十分楽しめてしまうのがタチ作品。移動式遊園地が村にやってきて、去っていくまでをタチ扮する郵便配達員をコメディ・リリーフにして描いたドタバタ喜劇。軽快に滑稽味たっぷりに躍動するタチ、その天性のトラブルメーカーぶり。音の使い方と工夫の面白さ(明らかに現実的ではないヘンな効果音の数々笑)。後のユロさんシリーズでもお馴染みとなる要素が既に見られる。そして本作一番の魅力と言えばジャック・タチの自転車さばき!これが絶妙。後半の猛烈な漕ぎ回しによる映像の躍動感も圧巻だった。動物や子供を捉えたショットもタチならではの叙情が漂っていて、冒頭の車に積まれた木馬に群がってくる子供たちの描写は、エリセの『ミツバチのささやき』冒頭シーンが重なって思わず笑みがこぼれてしまった。

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画質は残念ながら劣悪。これは元の素材が悪すぎるのかも。画質の酷さに反して音(特にセリフ)が妙に鮮明だったので、かえって違和感を感じた。来年出るという国内盤のクオリティや如何に。