『階段通りの人々』

監督:マノエル・ド・オリヴェイラ

階段通り沿いの長屋風建物に住む貧しい人々を描いたちょっと奇妙な味わいの人情悲喜劇。"恵みの箱"をめぐる醜い争いから"災い転じて福となす"女性の顛末など寓話性の高い物語でもある。階段と踊り場を舞台に見立てた高低差のある人物配置が、ユニークな視覚効果を生んでいる。路地のような狭い空間も面白い。大袈裟な所作やセリフ回し、時間の経過を「時の踊り」というバレエで繋いでしまう大胆なショットなど、とにかく舞台臭の強い作品だった。人の良い酒場の主人、そこで穏やかにファドを奏でる老教授、二人の表情と佇まいが素晴らしい。温もりのある小品。