『ピクニック』

監督:ジャン・ルノワール

ささやかなピクニックの情景が、究極の映画的モチーフになってしまうルノワールの小宇宙。柔らかく眩しい光線が、陽性の官能性と相俟って、何とも幸福感溢れる自然主義的な世界を生み出している。本作は「揺れの映画」と言っても良いと思う。水、馬車、木の影、草花、雲、ブランコ、ボート、男女の官能心理(どちらも等しく、健全(?)にスケベなのだ!)、映画を彩るあらゆる要素が揺れている。白いドレスをまとった華奢な婦人シルヴィア・バタイユが鮮烈な印象を残す。それとルノワール本人が演じる宿屋の主人も良い味を出している。フライパンを揺らしながら、ふくよかなマダムを見て一言「あれこそ女だ」。ん〜参りました(笑)。生命の芳香が濃厚に漂う、まさに至福の40分。

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盤質。画質はS/Nが若干悪いくらいで、粒子状ノイズも思ったより目立ちません。解像度もコントラストも良好です。圧巻なのは特典ですね。「ピクニック」の撮影風景(86分)と「ピクニック」のリハーサル(15分)、それと詳細なデータと解説が記されたブックレットが封入されています。「撮影風景」は、いわゆる撮影現場を別のキャメラが捉えたメイキング映像ではなくて、本編で使われなかったテイクが延々と納められている、言わば「ビートルズ・アンソロジーCD」のような内容になっています。息子のアラン・ルノワールやがカチンコを打っていたり、ルノワールの演出指示や叱り声などが聞けたり、まさにシネフィル感涙のお宝特典ですね。リハーサル映像では、ソフト・フォーカスで捉えられたシルヴィア・バタイユや、何度も繰り返されるキスシーンが素晴らしかったです(笑)。