『10ミニッツ・オールダー』

大不評だった劇場公開時の邦題が『レッド』と『グリーン』に変更。前者ではやっぱりエリセの『ライフライン』が群を抜いていますね。とにかく作品の密度が濃いです。そして、映像がもつ吸引力の強さ、音の繊細さ。観終えた後、10分とは思えない充実した余韻が残ります。本当に素晴らしい構成力と演出力ですねぇ。ああー長編も観たい!他ではカウリスマキジャームッシュが劇場鑑賞時と同じく良かったです。ヴェンダースのはどうも好きになれません。トリップ映像が、あの壮大な失敗作『夢の涯てまでも』の後半部分を思い出して憂鬱な気分になるんです(笑)。ヘルツォークスパイク・リーと陳凱歌は普通に楽しめる短編ですね。そして今回が初見となる『グリーン』。『レッド』に比べてアクが強いと言うか、ヘンに趣向を凝らした品が多いですね。ベルトルッチの『水の寓話』、イジー・メンチェルの『老優の一瞬』、クレール・ドゥニの『ジャン=リュック・ナンシーとの対話』が印象に残りました。トリを飾るゴダールのコラージュも圧巻。ゴダールはやはりゴダールでした。彼は映画の申し子であると同時に、哲学者でもあり、詩人でもあるんですね。

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盤質。画質は『レッド』『グリーン』ともにS/Nが若干悪いくらいで概ね良好です。音も問題なし。初回特典のDisc3には、メイキング、ベネチア映画祭での記者会見、短編ドキュメンタリー『10ミニッツ・オールダー』が収録されています。メイキングのエリセのインタビュー映像は、たったの3分間と短いものですが、監督の動いている映像と肉声は感涙ものでしたねぇ(笑)。近々、このインタビュー映像の採録と画像をエリセ部屋にアップする予定です。