『肉弾鬼中隊』

監督:ジョン・フォード

邦題は大嘘(笑)。狙撃兵によって砂漠のオアシスに閉じ込められた中隊が壊滅していく様を描いた中篇。尺の関係なのか脚本が大雑把、演出も妙にアッサリしていて、狙撃される恐怖感とか、徐々に追い詰められていく緊迫感に全く欠けているのが残念。フォードらしい躍動感や詩情性もなく平凡な作品というのが正直な印象かも。ボリス・カーロフ扮する強面の兵士が発狂し、十字架のような杖をついて脱走するシーンが唯一良かった。砂漠の只中で、姿の見えないアラブ人狙撃兵に怯える白人部隊という図式は、何となく現在のイラク駐屯米軍とテロ組織の関係を想起させなくもない。兵士が一人また一人と死んでいく展開や、ズラッと横に並んだ剣の墓標に悲壮感漂うラッパの音が被さるラストは『七人の侍』に強い影響を与えていると思う。黒澤明はフォードが大好き。