『不思議の世界絵図』

監督:マルティン・シュリーク

放校された少女が母の元へ帰る旅路の中で様々な人達と出会い、風変わりな交流を交わしていく。いわゆるロードムービーらしさは希薄で、一つ一つの独立したエピソードによって構成されているのが特徴。エキセントリックでユーモラス、さりげなく堂々と現実ズレした世界には寓話的なものを感じさせるけれど、ただ単にヘンチクリンな人間ドラマと紙一重のようなところがあって、それが何とも不思議な魅力を醸し出している。地味に淡々とシュールな世界を描いていくマルティン・シュリーク。今回観てきた3作品、驚くような傑作でも衝撃的な作品でもなかったけれど、ひっそりと心に刻まれる上質の小品ばかりだった。湿り気を帯びたスロヴァキアの牧歌的な風景、その豊かな森、鳥のさえずり、風の描写と音、緩やかで大らかなリズム、とても心地良かったことは確かだ。