『地獄の逃避行』 ■■□

監督:テレンス・マリック

実話を元にしているそうですが、本作が撮られた1973年はベトナム戦争の末期。理由なき殺人を繰り返しながら逃げ場のない逃避行を続ける青年と少女の物語には、明らかに泥沼化した戦争に対する諷刺を感じさせますし、病めるアメリカ社会が反映されているのも事実だと思います。原題の『BADLANDS』という言葉に込められたアイロニーは、静かで淡々とした作風とは裏腹にとても辛辣なものであるような気がしました。広大な田園風景と果てしない地平線の寂寞たるイメージ、マーティ・シーンとシシー・スペイセクの儚くて脆い存在と絆、反体制的な象徴としてのジェームス・ディーン幻想。孤独や不安や空虚がヒリヒリと伝わってくるドロップアウターの悲しい寓話ですね。

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盤質。S/N、解像度、発色いずれも良くありませんでした。でもノイジーな映像とプアな音質が作品の雰囲気にマッチしていると言えなくもないかも?(笑)。まっ、1,500円ですからね。我慢がまん。