『牧師の未亡人』 ■■■□

監督:カール・テオドール・ドライヤー

牧師就任の条件として老いた未亡人と結婚するハメになった神学生とその婚約者であるマリの3人によるシチュエーション喜劇。ユーモラスな物語が最後で荘厳な死のドラマへと一転する構成が秀逸。老未亡人が夫の墓参りをし、ゆったりとした所作で人や動物や物に別れを告げた後、静かに祈りを捧げるシークエンスは実に感動的だった。室内場面の構図も印象に残る。扉のない仕切りの太い枠の中に収まった人物は絵画のように美しい。十字架の形をしたアイリス・アウトで終わる本作は、喜劇でありながらも宗教的倫理が強く存在している生と死の人間ドラマでもあるのだ。