『再現』 ■■■

監督:テオ・アンゲロプロス

キアロスタミやマフマルバフのようなメタ手法で語られるフィルムノワールのような犯罪劇(しかし舞台は山深い寒村なのだ!)。やや技巧的な構成に走りすぎているきらいがありますが、室内シーンにおける光と影の隠微な戯れや、美しいロングショットの数々など映像は文句なしに素晴らしい。最初期の作品なのにしっかり360度パンをやっているのが妙に嬉しかったですね(笑)。最後もこれぞアンゲロプロス!というフィックスの長廻し。静かな緊張感がたまりません。ギリシャの民俗音楽も印象に残ります。ちなみにアンゲロプロス自身が出演しているのも見逃せない点です。演じる役はドキュメンタリー作家(?)ですが、これがどうみてもゴダールにしか見えないんですよね(笑)。パリ留学時代に直接ヌーヴェル・ヴァーグ旋風の洗礼を浴びているアンゲロプロスだけに、案外ゴダールに憧れていたのかもしれません。手持ちキャメラが随所に使われているのも、明らかにネオレアリスモやヌーヴェルヴァーグを意識した演出だと思います。それとやっぱり白黒の映像は魅力的ですねぇ。何せ濡れたアスファルトに光が当たるだけで、氷の川のように美しく見えてしまうのですから。こういう風に感じてしまうと、つい「白黒こそ映画なり!」と断言したくなるのが映画バカの悪いクセで(笑)。でも正直な気持ちとして、アンゲロプロスの白黒作品をもっと観てみたかったです。

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盤質。画質は良好。画面揺れなど絵が不安定な箇所もありますが、鮮度の高い黒白映像です。ギリシャ本国でさえ観れないという幻の作品を、世界で唯一DVDで観れてしまう恵まれた国・日本。