『リアリズムの宿』 ■■□

監督:山下敦弘

のっけから反リアリズムの演出で思わず面食らう(笑)。可愛らしい娘が男二人の旅に飛び入り参加するとびっきりのエンターテインメント性まであるこの作品は、しかし後半で、人の心のささやかな交流が、リアルな感触で静かにしみじみと伝わってくる"つげ義春"的な世界を見事に描き出す。鄙びた温泉町の風景も実に良いのだけれど、やはり最後に主人公たちが泊まる「リアリズムの宿」での一連のシークエンスが最も心に残った。尾野真千子が上半身裸で駆け寄ってくる砂浜の超ロングショットも印象深い。笑いに独特の「間」がある。アキ・カウリスマキのようなユーモア感覚だ。