『まわり道』 ■■■□

v-erice2005-04-13


監督:ヴィム・ヴェンダース

ゲーテ「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」の現代翻案版映画。孤独のパラドックスに陥った人々の彷徨を描いた静かなロードムービーです。ハントケ脚本によるダイアローグはやや文学的すぎるきらいがあるのですが、ヴェンダースの繊細な映像感覚と俳優の自然な存在感のおかげで、それほど嫌味になっていません。逆に辛気臭いところが本作の魅力でもあるんですよね。全編に漂うメランコリックな雰囲気や緩慢な流れ、このヴェンダース的というしかない"映画の時間"が妙に心地良いんです。とりわけボンの路地をぶらつくシーンと、朝の山道をゆったり散歩するシーンの長廻し、ここは何度観ても癒されますねぇ(笑)。リュディガー・フォーグラー、ハンナ・シグラ、ペーター・カーン、ハンス・クリスティアン・ブレッヒ、そしてナスターシャ・キンスキー(本名のナクチンスキーとクレジットされています)とキャスティングも最高。ナスターシャ演じる聾唖の少女ミニョンはヴェンダース作品に登場するヒロインの中で『都会のアリス』のイェラ・ロットレンダーと共に特別な輝きを放っています。彼女の美しく力強い眼差しは言葉を発しないからこそより深く鋭く観る者に迫ってきます。側転や逆立ちやジャグリングや手品といったアクションもしかりですね。山の散歩シーンでヴェートーヴェンの「第九」を口笛で吹くところも印象的。ちなみにTVで『アンナ・マグダレーナ・バッハの年代記』が、ドライブ・イン・シアターではPeter Lilienthal(日本ではまったく知られていませんが、ヴェンダースの友人でベルリン映画祭金熊賞を獲ったこともあるドイツの映画作家。『アメリカの友人』で青い帽子をかぶったマフィアを演じている)の『La Victoria』が上映されています。

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盤質。仏盤の良質マスターを使っているだけあって良好です。ただ仏盤にあったヴェンダースのコメンタリーが未収録だったのはとても残念です。メニュー画面もセンスの差が歴然(^^; ジャケットにも言えることなんですが、国内盤の野暮ったさには本当に悲しくなってきますねぇ。

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