『ばかのハコ船』 ■■□

監督:山下敦弘

アキ・カウリスマキの映画に出てくるサエナイ容貌の男女は圧倒的に寡黙で無表情ですが、山下敦弘の映画のサエナイ男女はわりと饒舌で表情も豊か。前者には気取りがありますが後者にはありません。同じ貧乏でも前者は誇り(この場合、倫理性と言っても良いかもしれない)を感じさせますが後者は微塵も感じさせません(笑)。この違いはかなり決定的なものではないかと思います。ユーモア感覚も似ているようで似ていないんですよね。カウリスマキは大真面目にギャグをかます"ギャップの笑い"ですが、山下敦弘はローテンションの漫才(おぎやはぎ的な)という感じ。『リアリズムの宿』を観た時、直感的にカウリスマキと同じ匂いを感じ取ったのですが、どうやらそれは気のせいだったみたいですね。やはり独自の山下テイストなるものが存在するのでしょう。勿論カウリスマキを始め、ジャームッシュやアントニオーニや侯孝賢モレッティといった作家たちを想起させるショットがあることも確かです。それも含めて好きなタイプの作家ですね。今後も要チェック。