『レベッカ』 ■■■

監督:アルフレッド・ヒッチコック

正統派文芸メロドラマなのかと思いきや、実はゴシック的ムードが横溢するニューロティックなサスペンス・ロマンでした。陰気で閉塞的な状況を広大さによって際立たせるマンダレイ屋敷内の空間演出、名だけが語られるレベッカの不気味な存在感が秀逸です。ジュディス・アンダーソンの異様な人物造形も良いですね。そしてジョーン・フォンテーンの美しさ。間違いなく彼女あってこその作品でしょう。どこか暗さを感じさせる目が印象的です。レベッカの衣装をまとってゆったりと階段を降りてくるシーンの表情と所作。ヒッチコックらしい流麗なタッチ、最も好きなショットです。ソフィスティケートされた女優の"潜在化された官能性"がヒッチコック・ヒロインの大きな魅力でもあります。