『反撥』 ■■■■

監督:ロマン・ポランスキー

これはコワい!子供の時に観ていたら間違いなくトラウマ体験になっていたでしょう。不可視な「心の闇」を可視化させることの恐ろしさ。台詞を極力排した映像と音の大胆かつ繊細な演出は、純粋な映画的快楽に満ち溢れています。抑圧された性意識を解放できず、薄暗いアパートの中で徐々に精神を崩壊させていくカトリーヌ・ドヌーブの静かなる狂気には、人形的な美しさと隠微なエロティシズムが感じられてゾクゾクしましたねぇ。かの澁澤龍彦は、ドヌーブの魅力を「デカダンスの味」と言い、それは「どことなく投げやりなところ、何を考えているのかよく解らぬ、受身な、自堕落な、退廃的なところを強調したかったのである」と語っています。本作、そしてブニュエルの『昼顔』や『哀しみのトリスターナ』にこそ女優カトリーヌ・ドヌーブの本質が露呈しているのかもしれません。