『郵便配達は二度ベルを鳴らす』 ■■■□

監督:テイ・ガーネット

直接的な描写ができないことは、映画にとってプラスにこそなれマイナスにはならないことが本作を観ると良く分かります。罪を犯した人間は必ずその報いを受けるというハリウッドの鉄則を遵守することによって、不義の愛が最後で美しいメロドラマになってしまうシニカルな二重構造。やはり映画は抑圧されてこそ輝くもの(『ミツバチのささやき』のように)なのではないだろうか。白い制服、白い私服、白い水着に身を包んでいたラナ・ターナーが突然黒い喪服姿になって現われる鮮やかな視覚効果(それは否応なく不吉な結末を予感させる)、ネオンの明滅による照明効果が冴える店内でのダンスシーン、やまびこを使った明暗の対比がユニークな殺人シークエンス、象徴的に反復される小さな入江での海水浴シーン、チョイ役ながら強烈な存在感を見せるヒューム・クローニン(かなりのワルだが罰せられない反則的な人物。痛烈な弁護士批判とも言える)など見所満載。