『ある女の秘密』 ■■■□

監督:ニコラス・レイ

回想形式で語られるサスペンス・メロドラマ。微妙にあるいは大胆に高低差をつけた人物配置、それに伴う複雑繊細な視線の動きが一見何でもない室内の会話シーンを自由かつスリリングなものにしています。特にメルヴィン・ダグラスとモーリン・オハラグロリア・グレアムの三角関係が描かれるシークエンスの人物配置と視線の演出は絶妙です。主演のモーリン・オハラそっちのけ、艶やかな照明を浴びてソフトフォーカス気味にほの白く浮かび上がるグロリア・グレアムの美しいクローズアップ(眉毛の動きがたまりません笑)が素晴らしかったです。ところでニコラス・レイは人物をソファやベッド(時には地面)に横たわらせるのが好きな人で、この「横たわる人物」のイメージが言わば彼の作品を特徴付けるイコノグラフィーの一つでもあるわけなんですが、レイの熱狂的なファンであり精神的な後継者とも言えるビクトル・エリセの作品にも必ず人が横たわるショットが出てくるんですよね。ただエリセのことを想起したそもそものきっかけは、「横たわる人物」のイメージではなくて、グロリア・グレアム演じる歌姫のステージネームが「エストレリータ」だったからなのでした。

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盤質。画質は中程度。オリジナル音声(字幕オン・オフ可)と仏語吹替え音声が収録されています。