『危険な場所で』 ■■■■□

監督:ニコラス・レイ

ビルと闇に包まれた閉塞的な黒い都会から、雪と雲に覆われた開放的な白い田舎へ。劇的な世界の変化、この強烈なコントラストが男女の奇妙な出会いの物語を幻想的に盛り上げます。ヴェンダースジャームッシュのような、風景の変容を車内から捉えたショット(電車が一瞬映る!)が印象的です。ロバート・ライアン、ワード・ボンド、アイダ・ルピノによる静かな緊張感が漂う室内劇、空間造形と映画的時間の濃密さにクラクラしてきます。ローキーの画面の中、ランプと暖炉の灯りによって浮かび上がる人物の淡い表情の繊細さ。そしてニコラス・レイの真骨頂とも言える視線の演出の醍醐味。盲目のアイダ・ルピノは視線を交わすのではなく視線を宙に彷徨わせることによって豊かなエモーションを生み出します。盲目なのかを確かめるためにライアンが彼女の顔の前でライターの炎をチラつかせるシーンのクローズアップも素晴らしいです。椅子、階段、地下蔵、岩山といった上下の関係を際立たせる装置と場所の見せ方使い方、その鮮やかな効果と存在感はアンソニー・マンと双璧といった感じ。バーナード・ハーマンの音楽も良いんですよねぇ。雰囲気抜群。

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盤質。画質はなかなか良好。オリジナル音声のみ収録。字幕オン・オフ可能。