『牛泥棒』 ■■■■

監督:ウィリアム・A・ウェルマン

集団心理の怖さを描いた人間ドラマ。40年代前半にこのような暗く救いのない西部劇が作られていたことに驚かされた。人物造形がとにかく見事で、各人個性がありながらも決して突出することがなく、ヘンリー・フォンダも目立ちすぎず地味すぎずバランス良く集団の中に収まっている。個人的には鉄火肌の女ガンマン演じるジェーン・ダーウェルがお気に入り。それと『オズの魔法使』の「西の魔女」マーガレット・ハミルトンが家政婦役で出てくる(ワンシーンなのにもの凄いインパクト)。冬とはいえ登場人物がみな厚手のコートに身を包んでいるのも西部劇としては異色な感じだ。最初と最後のまるでフィルムを逆回転させたようなショットによる円環構造の演出も実に鮮やかである。