『アタラント号』 ■■■■

監督:ジャン・ヴィゴ

なんて愉快な映画だろう。船上生活という言わば閉ざされた世界を描いていながらどこまでも自由な精神性を感じさせる。その最大の具現者ミシェル・シモンの天衣無縫ぶり。彼の船室は夢のガラクタ箱だ。ボリス・カウフマンの美しい(特にローキー)キャメラ、俯瞰とあおりが中心の大胆な構図も面白い。ベルトルッチが『ラスト・タンゴ・イン・パリ』で本作にオマージュを捧げているけれど、エミール・クストリッツァはロマの人々を主役にほとんどリメイクと言っても良いような『黒猫白猫』を撮ってしまった。終盤で羽毛が飛散するこの映画にはフェリーニよりもヴィゴの精神が息づいている。

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盤質。画質はそこそこ。PAL/NTSC変換マスター。左右が若干トリミングされているみたいです。