『アデルの恋の物語』 ■■■■

監督:フランソワ・トリュフォー

イザベル・アジャーニが信じられないくらい美しい。そんな美しすぎる彼女が一人の男への愛に狂い徐々に落ちぶれていく(あの『夏の嵐』のアリダ・ヴァリのように)のが本作の理不尽さであり面白さでもある。馴染みの書店の主人にユゴーの『レ・ミゼラブル』を贈られた時に激しく目をしばたたかせるシーン(睫毛がとても魅力的なのだ)や、せかせかと手紙を書く仕草なども印象的で、その意味ではアジャーニという女優の所作と表情を追ったドキュメンタリーでもあるのだ。ネストール・アルメンドロスによる蝋燭の灯りを光源にした室内のローキー撮影の雰囲気も素晴らしかった。