『山椒大夫』 ■■■■

監督:溝口健二

リアリスト溝口健二。残酷すぎて涙も出やしない。しかし映像は途方もなく美しい。序盤の現実と回想が交錯するシークエンスの構図と繋ぎの素晴らしさ、川辺での親子の別離、田中絹代が岸壁の上から子の名前を呼び叫ぶシーン、ゴダール北野武が模倣したラストの名高いパン・ショット。それと花柳喜章が脱走を図った老人の額に焼ゴテを押すシーンが怖ろしかった。老人の声、その様子を見詰める画面右下の下人の不気味な微笑みをたたえた横顔がなぜか強烈に印象に残る。